なぜ私たちは「ことほむ」と名乗り、何を目指すのか

1. はじめに

ことほむが灯す、未来への光

私たちは「ことほむ」というドメインの元に、集まり活動をしています。

「歴史に学び、今を創り、未来を守る。」という方針は、私たちの理念である「地域の歴史・文化を喜び言祝褒(ことほむ)。華厳思想で世の中に貢献する」と掲げた活動の原点から導き出された道しるべです。

このページでは、私たちがなぜ「ことほむ」として歩み始めたのか、どのような試練を乗り越え、何を大切に活動を続けているのか、そして私たちが目指す未来について、私たちの言葉でお伝えしたいと思います。 私たちの小さな灯火が、皆様と共に未来を照らす一助となることを願って。

2. 創業の灯火

文化への危機感から生まれた情熱

2019年、日本がインバウンドという大きな光に包まれる一方で、私たちは地域の貴重な文化財がその輝きの中で急速に消費されていく様に、静かな危機感を覚えていました。歴史的価値が十分に理解されぬまま、あるいは更新されぬままでは、その輝き自身がいつか失われかねない――。

歴史遺産領域、観光マネジメント、マーケティング、そしてシステム構築。それぞれ異なる専門分野で知見を深めてきた私たちは、「このままではいけない」という共通の想いを抱きました。文化財を守り伝えることと、地域が観光を通じて豊かになること。この二つが真に両立し、持続可能な未来を築くための新たな道を切り拓きたい。その熱い情熱が、「ことほむ」誕生の原動力となりました。

3. 試練と共に

コロナ禍、そして能登の痛みを知って

私たちの船出は、奇しくも世界がコロナ禍という未曾有の嵐に見舞われる時期と重なりました。インバウンドの熱狂は急速に静まり、地域も、そして私たち自身も、活動の大きな制約に直面しました。
しかし、私たちは歩みを止めませんでした。オンラインでの情報発信、新たなサービスの模索、そして何よりも「文化の灯を絶やしてはならない」という信念が、私たちを支えました。

そして2024年元旦、能登半島を襲った大きな地震。私たちの拠点の一つである石川県も大きな影響を受け、改めて地域文化の尊さと、それを未来へ繋ぐことの重責を痛感させられました。この経験は、私たちの使命をより深く、そして揺るぎないものとして心に刻みつけています。困難を経験したからこそ見える景色があり、芽生える決意があります。

4. 私たちの変わらぬ使命

未来へ文化を継承するために

ことほむの活動の根底には、常に「未来の世代へ、かけがえのない地域の文化・文化財を確かに引き継ぎたい」という強い意志があります。私たちは、正しい歴史認識こそが、日本人の存在価値基盤(アイデンティティ)を強化し、未来を豊かにすると信じています。目先の利便性や短期的な都合で、先人たちが紡いできた物語や知恵が歪められたり、忘れ去られたりすることのないよう、専門的な知見と誠実な心をもって社会に貢献したいと考えています。

例えば、アニメ作品の時代考証サービスでは、作品世界のリアリティと深みを追求し、視聴者に正しい歴史文化の一端に触れてもらう機会を創出します。長野県上田市「柳町」での文化観光リブランディングでは、「感情共感」を軸に、観光客と地域の双方にとってより豊かで持続可能な関係性を目指し、文化財への負荷を最小限に留めながらその価値を長寿命化させる「ミニマムブランディング」という具体的な挑戦を続けています。これら一つ一つの活動が、私たちの使命を体現するものです。

5. なぜ私たちは「ことほむ」なのか?

社名である「ことほむ」には、私たちの存在意義と、活動を通じて実現したい世界の姿が込められています。

「ことほむ」は古代日本語「言祝む(く)」から来ています。
現代でも「寿ぎ」として使われ、祝福を意味しています。

私たちはこの「ことほむ」という名に、東洋の深い叡智である華厳思想の世界観を重ねています。

華厳の教えでは、この世のあらゆる「事(こと)」――歴史の一片、一つの文化財、人々のささやかな営み、そして発せられる一つ一つの「言(ことば)」――は、孤立して存在するのではなく、帝網(たいもう)のように無限に繋がりあい、互いに影響を及ぼしあいながら一つの壮大な調和を織りなしていると説きます。「一即一切、一切即一」という言葉が示すように、一つの中にも宇宙全体が宿り、宇宙全体もまた個々の現れであると。

私たちの名にある「こと」は、まさにこれらの個々の現象や物語、そして言葉を指し示します。そして「ほむ」とは、それら一つ一つの「こと」が持つ固有の輝きと、それらが織りなす関係性の深遠なる美しさを深く理解し、敬い、称え(誉め)、そして未来永劫へと祝福し繋いでいく(寿ぐ)という私たちの意志を表しています。

この華厳の教えの中にある「事事無礙(じじむげ)」――個々の事象が互いに妨げ合うことなく融け合い、影響しあう――という視座は、私たちが歴史や文化、社会と向き合う際の根本です。

過去・現在・未来は断ち切られたものではなく、一つの大きな生命の流れとして相互に浸透しあっています。私たちの仕事は、一見するとバラバラに見える歴史の断片や文化資源、あるいは現代の課題の中から、それらが織りなす深い「縁起(えんぎ)」の網の目を丁寧に読み解き、その現代的な意味と価値を皆様と共に再発見し、未来へと活かしていく試みなのです。

例えば時代考証においては、単に過去の事実を照合するだけでなく、その時代の「事(こと)」が他の時代や文化の「事(こと)」とどのように響き合い、影響を与え合ったのか、その複雑な関係性の網を解きほぐします。
文化観光ブランディングでは、地域の個々の魅力を「点」として捉えるのではなく、それらを繋ぐことで初めて見えてくる地域の大きな物語を紡ぎ出し、訪れる人々の心に深く刻まれる体験をデザインします。

これら全ての活動が、私たちにとっての「ことほむ」の実践であり、個々の価値に光を当て、繋がりを紡ぎ、新たな調和と価値を社会に灯していく行為なのです。

6. 未来への展望

私たちが描く、文化が息づく社会

「ことほむ」の名のもとに、私たちは、一つ一つの文化や歴史が持つ固有の価値が深く尊重され、それらが互いに照らし合い、より大きな輝きを放つような社会の実現に貢献したいと願っています。

それは多様な価値観が共存し、歴史の知恵が未来の創造に活かされ、文化が人々の心と地域、そして世代と世代を温かく繋ぐ世界です。

私たちの歩みは小さいかもしれません。しかし、この壮大な帝網珠(たいもうしゅ)の一つとして、小さいながらも確かな光を放ち続けられるよう、これからも変わらぬ情熱と誠実さをもって、皆様と共に未来を「ことほみ」続けてまいります。