このレポートは、日本の観光アドバタイジングが辿ってきた半世紀にわたる変遷を、三つの時代を通じて解き明かすものです。

まず、テレビや雑誌が主役だった昭和・平成時代を振り返ります。ここでは、「ディスカバー・ジャパン」や「そうだ 京都、行こう。」といった象徴的なキャンペーンが、いかにして国民的な旅の物語を創り出し、共有された文化としての旅行を形作ったかを分析します 。  

次に、ソーシャルメディアが台頭した令和時代に焦点を当てます。個人の発信が大きな影響力を持つようになり、広告の主役が「一対多」のマス広告から、無数の個人が織りなす「多対多」の対話へと移行した現代の姿を追います。これにより、ニッチな市場が生まれた一方で、オーバーツーリズムといった新たな課題も深刻化しました 。  

最後に、来るべきAI時代の観光アドバタイジングを予測します。AIが個人の嗜好を先読みし、一人ひとりに最適化された旅を提案する「一対一」の超パーソナル化がもたらす未来と、それに伴う倫理的な課題や、持続可能な観光を実現するための戦略について考察します 。  

このレポートは、時代ごとの広告哲学、メディア、そして社会背景の変化を読み解き、未来の観光コミュニケーションのあり方を展望するものです。

以下のレポートは、日本の旅行者が半世紀の間に遂げた劇的な変容を、二つの象徴的な時代を軸に解き明かすものです。

一つは、高度経済成長を背景に「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンが旅行ブームを巻き起こした1970年代 。雑誌を片手に日本各地の情緒ある町並みを訪れた「アンノン族」のように、多くの人々が共有された一つの大きな物語を求めて旅に出た時代です 。  

もう一つは、デジタル化と価値観の多様化が進む現代。人々はSNSで無数の情報を集め、画一的な観光よりも、個々の興味関心に基づいた「体験」を重視するようになりました。これにより、かつてないほど多様でパーソナルな旅の形が生まれています。

この旅行者の変遷は、先にまとめた「日本の観光アドバタイジングの変遷」レポートと密接不可分な関係にあります。昭和の広告がテレビや雑誌を通じた「一対多」のマス・コミュニケーションで国民的な旅への憧れを創り出したのに対し、令和のコミュニケーションはSNS上の「多対多」の対話の中から、個人の多様な旅のスタイルを後押しし、時には課題も生み出しています。

時代を映す広告という鏡を通して、日本の旅行者がどのように自らを発見し、旅のスタイルを変化させてきたのかを浮き彫りにします。