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観光と物語は本来ひと括りで考えるもの

古来から人が移動するときには「動機」が存在しています。動機を促しているもののなかには「物語」があります。たとえば文化財が存在している観光地において、それそのものを目的に見に来ることがあたりまえとしてプロモーションをしている観光地は多いです。しかし本来そこに来る人たちには何らかの動機があり、さらに何らかの期待を持って訪れています。これら動機づけの一つにアニメーション作品が存在します。漫画やライトノベルコンテンツと連携するなどし、作品の世界観を構築する元となった地域へ赴く聖地巡礼は動機と期待を同時に満たす力があります。

しかしそのアニメーション作品企画には、ベースにマーケティング情報が存在しています。このマーケティング情報は主に過去実績に基づいた予想線上のものであり、コロナ禍を挟んだ現在、この先いつまでも同じモデルが使える保証はありません。また四半期ごとに変わるクールによって、よほどのヒット作品以外は聖地巡礼など効果寿命が短い傾向にあります。

ここで注目してもらいたいのは古典太平記などを筆頭にした軍記物。おおよそ室町時代に成立したこれら物語の特徴は「地域に強く根付いている話であること」。令和の現在でも観光の核を形成しようとしている信州上田市において、真田幸村など登場人物像はほぼ江戸前期に作られた難波戦記が元となっており、史実とは異なっていることが多いのですが、コンテンツとしては非常に長寿であり、コア層を中心に歴史ファン以外のファンも多いです。気をつけなければならないのは「軍記物」が長寿の理由ではなく「地域との関連性が高い」ことが幅広いファン層を形成している点です。“そこにある世界観に浸り、その世界の住人となること。これこそが人々の心を満たす(山村高淑)”(地域情報資源として䛾地域内在型物語䛾発想・創作支援および配信手法(柊 和佑, 泉 志帆莉, 安藤 友晴 著/2014)より)から読み取れるよう、「観光」と「物語」は表裏一体であることがわかります。上記研究論文からも観光と物語(世界観)についての結びつきが強いことが明らかですが、現在のアニメーション作品を見渡し、過去の軍記物に匹敵するような地域を描いた世界観の作品はどのくらいあるでしょうか。

それぞれの抱える問題点について

  • 文化財の観光活用については行政担当課が別れているため、観光行政として活用を考えた場合、外郭団体や観光DMOには歴史と場所(状況によっては入場情報)以上の情報は出せないことが現状です。そのためそれ以上の活用に関しては、アイデアがあっても幹事組織として成り立ちにくいため、実現性が低くなります。
  • セルルックアニメーション業界においては、エンターテイメントのビジネスモデルに大きな変化が生じていて、その存在意義に多様性が求められている時代に突入しています。プロダクションにおいてはプリプロダクション機能の一部を担うなど、経営収益構造の変化を考える時期に入っています。また団塊ジュニア世代が50歳代に突入することもあり、試行の変化が顕著に現れはじめる期間に突入していることに加え、制作の中国依存問題に関して顕在化してくる可能性を考慮に入れなければなりません。

現在の状況を図解

現状は実質的に観光地とアニメーション作品とは切り離されていて、聖地巡礼コンテンツツーリズムは、観光地の各関連業と大きな壁があります。うまく回っているように見える地域でも、壁の存在は変わらず、さらに地域住民との間にも大きな壁が存在します。

「壁」を取り払うBusiness Ecosystemの構築

こうした壁の存在は経済的な断絶を招き、場合によっては心理的な壁をも構築してしまう。観光地としてのブランディングを考えた場合、地元で商売をしいる人や地域住民との断絶はブランドとして非常に大きな痛手となります。

こうした壁ができる最大の理由は、アニメーション作品の閉じた世界観にくわえ、閉じているファン層の存在があります。現在のアニメーションビジネスは、閉じられたファン層へ向けて短寿命かつ大量生産を行っている現状が見てとれます。したがって、たまたま舞台や取材対象となった地域との接点は非常に小さいのです。それにも関わらず、規模の大小を問わず全国から通常の観光客とは行動を異とする一部のファンが勝手に押し寄せる状況は、地域住民としてみれば好ましい状態ではありません。

問題解決のための課題

上記問題を解決するためには、それぞれのセクションをつなぎながら、それぞれのセクションに必要な企画提案や情報提供、事業計画のほか各種事務手続き、会計処理、ファンディング企画などを行うプロモーション組織が必要となります。

またセルルックアニメーションは、工程の大部分を占める手作業による制作工程を変化させることは困難です。紙からデジタルツールに置き換わったとしても基本的な工程に変化はありません。キャラクターや画面レイアウトに3DCG導入など新たな挑戦も始まっているため、会社によっては設備投資・技術開発費用の確保のほか、アートディレクションにおける品質保証ラインといった概念は曖昧なままで、常に新製品を作り上げ続ける構造を変化させることは、経営体力がない限り非常に難しい課題と言えます。

それぞれの課題を動かすための小さなアイデア

文化財観光活用とアニメーション、ゲームコンテンツには共通点があり、ソフト面において日本が国際的競争力の優位に立てるポテンシャルを持っていることです。この先ハード面においての国際的競争力はiPhoneなどのスマートフォン、OculusQuest2に見るVR機器において優位に立てる要素が見えていない反面、コンテンツが主をなすソフト面においては優位性を保ったままでいます。この状況は観光庁・文化庁・経産省なども認識しており、それぞれ目的に応じた予算編成を行っています。

こうした現状ですが、文化財行政、観光行政、コンテンツ業界を関連させたBusiness Ecosystemのプラットホームは存在していないため、一時的な連携プロジェクトは存在するものの、観光プロモーションの基礎である「持続」に関しては、観光関連団体などに納品されたあと手離れしているアニメーション作品もあり、価値情報の上書き(リブランド)ができていない状態です。そこで文化財情報を二次利用しやすい形に整え、Business Ecosystemの頂点にアニメーション・ゲームコンテンツ、その下にコンテンツツーリズムを置き、その配下に関連グッズ開発などを絡め、定期的にリブランドしていくプラットフォームの整備を進めていきたいと、ことほむ合同会社は考えています。

作品の種になる歴史・文化財の情報整理と地域観光を繋ぐ

大前提として「テレビ放送を含まない」ので、大規模な短期回収を前提とした予算のモデルではなく、長期間での予算回収モデルを想定しています。観光領域との連携により、作品プロモーションは単体で行う必要が無くなり、地域観光プロモーションと同期進行すればよく、行政観光プロモーションは交通事業者(JR各社や地方私鉄)との連携も多い為、告知効果の寿命が短いマスメディアを使うよりも長寿命での告知効果が期待できます。そのため、スタートダッシュこそ苦手ですが、一度走り出した場合年単位での告知効果が期待できます。(行政による観光PRは単年度事業ですが、事業元が無くならない限り継続されるため)

こうした特性がある為、テレビ放送を主としたアニメーション作品のシリーズ構成および一話ごとの時間規定は当てはまりません。予算規模と同時に作品リリース頻度やリブランドのための工夫、ゲーミフィケーションを活用したコミュニケーション手段の確立など、運用面でこまかな調整が必要となります。なお現時点で宿泊施設内向けのテレビにのみ配信できる仕組みは実現しており、実際の配信に関してはすぐにでも可能な状態であります。この配信システムの開発運営会社によると、今後このシステム(クラウドシステム)を活用してサイネージ端末を増加できないか検討中とのことであり、宿泊施設ロビーや観光案内所・駅構内などへの端末設置に関して情報を集めているそうです。

以上が全体概要です。なお、ことほむ合同会社はこの中において文化財・観光業界側とアニメーション業界側の中間に入り、文化財情報のまとめ・全体概要などの企画を立てることや作中設定の時代考証のほかグッズなどの企画が可能な組織です。

アニメーションコンテンツ(キャラクター)の強み

「人」に比べて異質なもののはずの「アニメーションキャラクター」に対して、現代の人たちは抵抗感が少ないようです。萌キャラと呼ばれるいわゆるヲタク向けのキャラクターだけではなく、アニメーションキャラクターにはアンパンマンやドラえもん、最近では初音ミクを始めとするボーカロイド勢に加えて、VTuberと呼ばれるバーチャルキャラクターも登場しています。

こうしたキャラクターを使った様々な実験も行われていることから、その有効性は注目すべきと考えています。

まとめ

※観光資源における文化財の再評価と作品世界観の長寿命化は、定義がまだされていない、サービス・コンテンツ産業におけるサーキュラー・エコノミーを構築していく第一歩だと考えています。

参考文献

アニメ聖地巡礼の観光社会学: コンテンツツーリズムのメディア・コミュニケーション分析岡本 健  (著))

コンテンツが拓く地域の可能性
-コンテンツ製作者・地域社会・ファンの三方良しをかなえるアニメ聖地巡礼-(大谷 尚之 (著), 松本 淳 (著), 山村 高淑 (著))

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