用途開発研究に至った経緯

オルゴールの置かれている現状とオルゴール文化継承につながる布石として

国内において高級オルゴールメーカーはフジゲン株式会社ニデックインスツルメンツ(旧サンキョーオルゴール)となっており、主要部品であるムーブメントを製造しているのはニデックインスツルメンツ株式会社(旧三協精機製作所)のみです。とくにオルゴールムーブメントメーカーは、昨今の社会情勢も影響して事業規模は縮小の一途を辿っています。

オルゴールムーブメントの製造には、高精度な加工技術も必要ですが、音色を奏でるためのハープ部分と台座部分では金属組成の技術(溶鉱炉レベル)が必要です。

このままでは日本からオルゴール文化が消えてしまう可能性があり、フジゲン株式会社担当者様とオルゴールの新しい価値観創出に向け数年前からあらゆる方向で検討・検証を行い、ITとの連携を模索してきました。

そのうちのひとつがAR技術を用いた文化接点(タッチポイント)の創出で、今回展示しているものになります。AR技術自体はすでに枯れたものとなっており、安定していることから長期間の利用に耐えうると判断しました。また特別なアプリを必要としない方法が確立されていたこともあり、実地検証を行いながら、改善点を見つけ出すことなどを目的としています。

今回はスマートフォンを使ったデモンストレーション展示ですが、2025年ごろまでにARグラスが続々と様々なメーカーから発売されると考えられます。

ARグラスでオルゴールを見たときに楽曲の雰囲気に合わせた演出や何らかのメッセージが表示できるようになると新しい価値観を生み出すことができ、未来へオルゴールの技術と音色を紡ぐことができるのではないかと考えています。

今回の展示は、オルゴール文化を未来へ紡ぐきっかけになるかもしれない、一歩めの試みです。

今後について

ARで表示されている3Dモデルのある部分をタップ(将来的にはフィンガーアクション)することで、3Dモデルが拡大したVR表示へと繋げていくことを目指しています。
下図の左図がAR表示とすると、右図がVR表示のイメージになります。

今回展示したARの「とやま浮遊島」は、3Dモデルを表示するだけですが、将来的には島を指でタップした部分に応じて、その世界に入っていけるようにすることを目標としています。いわゆるVRと言われる世界につなげ、その中でコミュニケーションができることを目指しています。
その世界を「バーチャルとやま」と名付け、現在有志で開発している真っ最中です。
現在は富山駅周辺のVR空間を模したモックモデルが存在している段階で、今後ディテールアップされていく予定です。(上図)

その第一弾はクラシックな外観の富山市内電車っぽいモデルを予定しています。
まだ開発中ですが、3Dモデルは外観まで見られるところまでできました。
あとは内装を仕上げて、コミュニケーションができるVR SNSプラットフォーム(VketCloud を予定しています)へアップロードすることで、ARからVRへつながる一連の流れができるものと考えています。

生成AIによるI2Iを活用したアクスタ風アバターとの組み合わせ

何かと話題になっている生成AIですが、写真からイラストを生成することもできます。
そのため、特徴を捉えたイラスト化をすることができないか開発を進めています。安定した絵柄を出力するのは大変難しいのですが、現在は7割ほどの精度で安定した絵柄の出力を確保できるようになってきました。

こうしたせいせいAIを利用し、半身しか写っていない写真から全身を生成し、加筆修正などを加えた後に3Dモデルの中に組み込み、メッセージを届けるといった使い方の用途開発も進めています。

とやま自遊館の初日には間に合わないかもしれませんが、サンプルARを見られるように準備しています。

名刺やショップカードなどをマーカーにしたり、パッケージをマーカーにしたりすることで、ARを通したコミュニケーションを拡大できるのではないでしょうか?

いずれ歴史文化と紐づいたコンテンツも企画していく予定です。

※モデル「ぱくたそ」より

3Dモデルとの組み合わせサンプル
名刺やショップカードの拡張が考えられます。