2018年9月13日〜15日に、名古屋市徳川園で開催の「盆(才)展」に関連して、盆栽(bonsai)について少し基礎知識があると楽しめます。
また、従来と何が違うのかといった部分で、違いを感じてもらえると、楽しみ方も増えるかと思います。
盆栽の歴史
平安時代の絵図に描かれており、このころから日本に伝来してきたものと言われています。その後、途切れることなく現代まで続くのですが、詳細な歴史はGoogle Art & Cultureでまとめられていますので割愛します。
ここで注目するのは、時代の節目で栽培方法や飾られ方が変化している点です。平安時代の絵図からは、現代の盆栽のイメージがあまり感じられません。
この後、日本の中世でも盆栽は重宝されていくのですが、器(盆栽鉢)である焼きものの技術発展、栽培方法の発達、文化の成熟を経る度に次第に現代の形へと移っていきます。最も大きな変化は江戸期にあり、盆栽木の樹形は奇妙なものが珍重され、磁器製の器などに入れ、床の間に飾るといった形式が整いはじめます。そして近代に入り、武家から政治家へ愛好家が移っていく際、現在の盆栽の形になっていきました。
鑑賞の楽しみ
盆栽の飾り方には基本があり、掛け軸・盆栽台・盆栽鉢・添配の組み合わせでテーマを表します。ただし、茶道のような家元制度は無く、流派も少数に留まります。そのため飾り方の「型」というものは存在しません。盆栽鉢も現在は泥鉢が主流ですが、江戸期のように磁器の鉢を用いても構わないのです。
今回は、江戸期のように磁器鉢を用いた展示を試みています。鉢その物には絵付けをせず、盆栽木を邪魔しない工夫と、形を歪ませたり、フチを切ったりして磁器らしさを削っています。
そして観覧のポイントは、雰囲気を楽しむこと。できるだけ下方から見上げるように見ることです。小さな盆栽木が巨木に見える場所を探すのも楽しみの一つです。会場でしたから見上げている人を見たら、「通だな」って思って下さい。
盆(才)展では掛け軸はありません。代わりに現代友禅と現代アートで飾られます。今回のテーマ、「盆栽は現代のアート&サイエンス」にちなんで、現代アートはコーヒーや麦酒、ワインの偏光顕微鏡写真です。そして友禅のテーマは水槽。盆栽鉢は実験器具をモチーフにしています。
そもそもなぜ、アート&サイエンスなのか
盆栽というのは人工的に限られた土、養分などで育つ環境を守られ、その中で最適な大きさを維持し、生命を繋いでいるものだという現代盆栽(京都市左京区)の川崎氏の持論が発端です。
人の寿命をはるかに超える樹木を、盆栽園は代を繋ぎながら維持しています。
このサイクルを放棄した瞬間、盆栽は野性に戻るか、生命の維持が難しくなります。また盆栽の美を維持していくことは、文化の継承でもあります。
これらは壮大な実験でもあり、それ自体が藝術でもあります。
このテーマを直接的に表現しているのが今回の盆(才)展です。そして文化を継承し、時代の変化にあわせていくためには様々な専門家の技術、知識が必要です。いわば才能が集まることで一つの世界を生んでいます。だからこそ(才)の字を充てました。
樹種・樹形について
盆栽を鑑賞する際、樹形の種類を知っておくとより楽しめます。このため、盆栽には「正面」の考え方があります。いろいろな角度から見て、自分の正面を探すのも楽しみ方の一つですが、まずは素直に正面から鑑賞してみて下さい。
上図は主な樹形を分類したものです。自然の樹木を意識した形で分けられており、生えている環境を創造することが醍醐味でもあります。また自分の気に入った樹木樹形と出会うのは希なことかもしれませんので、もし心に打たれる出会いがあれば、その一瞬を大切にして下さい。
そして樹木一本一本にも鑑賞のポイントがあります。下図は一例ですが、いちばんていねいな はじめての盆栽の育て方/広瀬 幸男 (著)など、盆栽本には様々な鑑賞ポイントが掲載されています。
amazonにもたくさん盆栽の本がありますので、興味が出てきたら是非いろいろ読んでみて、鑑賞を楽しんで下さい。